数年ぶりに行く四国の山ということで、当日が来るのをとても楽しみにしていました。
今回は前夜発の現地泊です。ここのところ夜になると冷えてきているので、多めに着込んで出かけました。移動はSさんの車に乗せて頂きました。窓から見る街の明かりが綺麗でした。11時過ぎに道の駅「マイントピア別子」へ到着しました。思っていたより、他の車が多かったです。出来るだけすいている所に車を停めました。AさんとSさんはお酒とおつまみでプチ宴会を楽しんでいました。混ざりたい気持ちもあったのですが、明日に備えて先に寝させてもらいました。
翌朝は五時起床。辺りは真っ暗です。自分たち以外では、さすがに動いている様子は有りません。寝床の片付け、朝食をしていると現地集合のS.Oさんが来られました。今回は下り口が登り口と異なるので、佐伯さんと下岡さんが、車を一台、下山予定地(藤森ダム側 登山口)へ置きに行きました。Aさんと自分はベンチで二人の帰り待ちです。三十分くらい待っている予想だったのですが、その半分の時間で戻ってきました。じっと待っているのも寒かったので正直助かりました。運転手さんお疲れ様でした。
道の駅から登山口までは車道歩きです。朝は空気が澄んでいて気持ちがいいです。途中、灯を付けてジョギングをしている人とすれ違いました。こんな山の中、暗いうちから走っている人がいるのに驚きました。そのうち山の向こうから日が昇って、だんだんと明るくなってきました。出発してから約15分後、道路脇にある「えんとつ山登山口」へ到着しました。
山に入ってすぐ、樹の上から「ホウッ」と鳴く声が聞こえました。見上げると猿がいました。車道のすぐ傍から猿に遭遇するなんて、さすが自然豊富な四国です。登り始めなので足を慣らすように力をセーブしながら歩きました。この辺りは、観光名所として有名な「別子銅山」があった所です。当時の遺構(施設跡)が見られるのも今山行の楽しみの一つです。
最初に出会った遺構は、「えんとつ山」の煙突でした。レンガ造りで、下から見上げると圧巻の大きさでした。その後は生子山(しょうじやま)の山城跡(当時の縄張が少し判る)から新居浜の街並みを眺めつつ歩き、犬返へ向かう登りに差し掛かりました。犬返からの見晴らしはなかなか良かったです。犬を返すという名前のわりには坂がきつくないなと思っていたのですが、急だったのは、その先の登ってきた側とは反対側の南斜面でした。
急斜面を降り切った所で、前方の山々に白いものがうっすらとかかっているのが見えました。それは久しぶりに見る樹氷でした。日が昇っても気温があまり上がっていないお蔭で、溶けずに残っていたようです。この時刻に見えるとは幸運でした。そこからしばらくはホンノリ暗い木々の間を歩きました。湿度が合っているのか、木肌にも岩にも苔がびっしり生えていました。脇の大岩に手をかけると、苔でグッと手が沈み込みました。ふんわり柔らかくて、まるで分厚い絨毯の様な心地よい手触りでした。種子川(たねがわ)山を越え、しゃもじ形の案内看板を目印に魔戸の滝への分岐を通り過ぎました。坂を登りきった所で今回二つ目の遺構に出あいました。
この遺構は建物の壁だけ残ったような感じなのですが、特徴的なのは、厚みが六十センチくらいの壁に挟まれた道状のものがグネグネとつながっていることです。当時は蒸気式の巻き揚げ機でトロッコの上げ下ろしをしていたそうなので、関連施設だったのでしょうか。なんとも不思議な建物でした。その後も遺構がいくつか続きました。トロッコの停車場跡(五十坪くらいの広さ、斜面に石垣を組んで平地を造っている)などは興味深かったです。カブト岩手前のガレ道は植生が面白かった。岩にへばりついてクルクルと巻きながら伸びるクラマゴケは可愛らしかったです。植物好きの私としては、しっかりと堪能させて頂きました。
カブト岩に到着。一抱え二抱えくらいの岩を山頂に積んだような感じでした。ここで昼食です。とにかく寒い!!気温が低い上、汗で濡れたシャツが冷えて身体が凍えそうです。たまらずレインウェアの上からジャケットが重ね着しました。昼食を温かいものにしておいてよかったです。
短めの休憩の後、下山開始。西赤石には登らず、計画書にあったエスケープルートの東平方面へ行くことになりました。下山道は、ほぼ等高線に沿うようなルートで南へ向かいます。“高度が下がった感”が無かったので、いつもの山行より長く感じました。
東平に近づくと銅山の遺構が多く残っていて、興味深く感じました。なかでも旧東平第三変電所は立派でした。入口をくぐって中に入ると天井まで吹き抜けの広間があり、奥のほうは二階建てになっていました。当時はここに暖炉とかがあって屋内を温めていたのでしょうか?建物の見学をした後は、上部鉄道跡に沿って藤森ダムの方へ向かいました。小女郎川(コジョロウガワ)の渓流が綺麗でした。
川をまたぐ遠登志(おとし)橋へ到着。赤茶色をした古めかしいアーチ型の橋で、上からのワイヤーと横からのワイヤーで保持されていました。看板によると、この橋自体は当時の物で、その上に渡し板部分とワイヤーで安全に渡るための補強をしているそうです。踏み板部分は鉄板を敷いたような感じで先頭の佐伯さんが歩く度にウァンウァンと揺れました。橋を渡ってしばらく歩き、鹿森ダム付近の遠登志(おとし)登山口に到着。あらかじめまわしておいた佐伯さんの車で「マイントピア別子」に戻りました。
今回の山行は、樹林帯など落ち着いた雰囲気のところが多かったのと、露に濡れた瑞々しい植生が良かったです。後、自分は特に廃墟マニアというわけではなのですが、別子銅山の遺構は趣があってよかったです。
最後になりましたが、今回の山行中に自分がコンディションをくずしてしまい、同行の皆さんに助けてもらいながら歩きました。お蔭で無事に下山して楽しい思い出を残すことが出来ました。どうも有り難うございました。